キャリアに目標は必要? ~目標が持てない場合どうしたらいいのか~

日々たくさんの方の仕事に関する相談を受けている中で、本当に様々な悩みをお聞きします。

  • 今の仕事が合わないので転職したいけれど、自分には何が合っているのかわからない
  • やったことのない仕事は不安だから、経験のある中で探したい
  • 条件が多すぎて仕事が決まらないが、どうしたらいいのか

相談を受ける際の基本として、まず、自分を知る(自己理解)、自分の中で一番大切にしている部分は何か、外せない条件など、ランクを付けていきます。

次に、自分にはどんな分野が向いているのか、どんな仕事があるのかを知り(仕事理解)、3年後や5年後にどうなっていたいか、未来を考えます。 

そうやって、進むべき目標を定め、そこに向かうために今どんな仕事をしたらいいのか、そしてどうステップアップしていくのか、道筋を決めキャリアプランを作成します。

目標に向かって計画を立てて行動することは大切ですが、そもそも目標を持てない方、何を目標にしていいかわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は計画的に進む考えから少し離れた視点で、キャリアについて考えてみたいと思います。

 

ゴールを決めないキャリアの考え方 ~偶然から生まれる想像もつかない自分~

キャリアコンサルタントの勉強をする中で様々な理論を学びますが、その中でも私が自分の歩んだ人生から一番共感した理論を、少しだけ紹介したいと思います。

それはクランボルツの<計画的偶発性理論>と言われるものです。主な理論の内容は以下の通りです。

  • 予期せぬ出来事がキャリアを左右する
  • 偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たなキャリアにつながる
  • 何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える

かつての私は働くことに興味がなく、生活のためにとりあえず何かをしてお金を稼ぐという考えしかありませんでした。長い社会人生活の中では、何度か自分を取り巻く環境が変わることがありましたが、その都度、偶然の出会いがあり、その時の助言により何度かの転職を経て今の仕事に出会いました。働き始めたころの私を知っている友人からは、今の姿は想像もつかなかったと言われます。

これまでの自分を振り返ってみると、自ら行動することで新たな人と出会い、これまで知らなかった世界を知ったこと、さまざまな助言に対して否定的にとらえず、「やってみないと分からない、ダメだったらその時に考えよう」と一歩踏み出したこと、一歩踏み出したからにはやり遂げようと努力していたように思います。

結果、「やっぱり違ったな」と感じ退職したこともありますが、また、新たな出会いから新たな道を発見して進む。こんなことを繰り返しながら今の自分があると実感しています。

こんな経験を繰り返している自分だからこそ、クランボルツの理論は自分の中に一番スッと入ってきたように感じました。

偶然の中から目標を見つける

計画的偶発性理論によると、個人のキャリアの8割は、自分の行動や環境の変化の中で偶然に作られると言われています。ただ、その偶然を待っているだけでは、キャリアは広がりません。予期せぬ出来事が起きた際に行動できるだけの準備をしたり、偶然の出来事に遭遇すべく行動したりすることで、チャンスが生まれるのです。

急速に世の中が変化していくコロナ禍で、働き方や必要とされる能力もめまぐるしく変わっています。家庭と仕事を両立させるために働くことを諦めていた方もテレワーク導入が進み、無理なく働けるようになったケースも多いのではないでしょうか。

IT技術の進化もまためまぐるしく、今まで必要とされていた仕事が衰退し、新しい技術やサービスが求められるようになっています。これまで仕事で活かせる経験や能力がないと思っていても、趣味で得意だったことが仕事として求められたり、ずっと自分には無理だと思っていたことも少し経験してみるとそれが自分にあう仕事になることだってあります。

「目標を持つ」ということは簡単なことではありません。一方で「目標が持てない」ことはキャリアにとっての問題ではありません。人の出会いや新たな経験、情報をひとつひとつ丁寧に受け止め考えてみることで、目標が見えてくるかもしれません。

偶然をチャンスに変えるために

計画的偶発性理論では偶然をチャンスにするためには5つのスキルが必要とされています。

<5つのスキル>

  • 好奇心Curiosity. 興味を持つ
  • 持続性Persistence. 簡単にあきらめない
  • 柔軟性Flexibility. 柔軟にチャンスを活かす
  • 楽観性Optimism. 前向きに取り組む
  • リスクテイクRisk taking. 結果が分からなくても、 行動を起こす

人生には様々な転機があります。結婚や離婚、出産・子育て、子供の独立、介護による帰省、予期せぬ失業、病気による行動制限など…。

転機には喜ばしいことばかりではなく、それまで大切にしていたことも手放さなければならないこともあります。

私は、辛い時に声をかけ手を引っ張ってくれた友人がいたおかげで、新たな道に踏み出すことができました。そして、悩んでいた時に背中を押してくれた人、理解し応援してくれた人達のおかげで、努力や挑戦する楽しさを知ることができました。

もし、周りに相談できる人がいなかったり、自分の考えを一人だとうまく整理できなかったりする場合は、今すぐ仕事を探していなくてもキャリアコンサルタントに相談してみるのも良いきっかけになるかもしれません。

出会いは宝です。小さな出会いも大切に、どんな転機でも新たな出会いのチャンスととらえ行動することで、新たな道を広げていくことは可能です。

いつどんなハプニングや出会いがあるか分かりません。どんなハプニングも乗り越えられるよう、また、自分が興味のある仕事が見つかった時にチャンスを逃さないよう、日々アンテナを張り、積極的に行動し、挑戦する勇気と自信を持ちましょう。自分磨きを忘れずに日々を過ごしていきましょうね。

このコラムもあなたにとって良い出会いとなりますように。

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