「人生100年時代」と聞いて、ワクワクしますか?どんよりしますか?

以前行われたある調査では、どんより派が6割を超えていたそうです。中でも40代50代は、他世代に比べて更にどんよりしている人が多いという結果でした。

みなさんはいかがでしょうか?

3ステージからマルチステージへ

2016年に発刊されて話題となったリンダ・グラットン著「LIFE SHIFT」をきっかけに、「人生100年時代」というフレーズが広がったと言われています。

それまでの人生のステージは3つに分類でき、①教育から始まり、②仕事に就いてリタイヤまで働いたら、③引退して余生を楽しむのが一般的でした。しかし今後は長寿化が進み、70代、80代まで働くことや、会社勤めの他に兼業・副業、学び直し、ボランティアなど様々なステージを並行・移動しながら進んでいくマルチステージが提唱されています。ひとつの正解ルートだけでなく、多様な選択肢から個人が望む道を自ら選択して歩んでいくというものです。

私が人生100年時代という言葉を意識したのは40歳前後の時でした。そろそろ仕事も人生も折返しだと思っていたのに、突如ゴールが20年遠のいた感覚を持ったのを覚えています。

その後、コロナ禍も相まって働き方や生活スタイルが変わり、この本に描かれた世界がどんどん現実味を帯びてきましたが、不確実で変化の激しい時代、ワクワクというより、不安を感じるどんよりが優勢なのも頷けます。

学ぶスタンスの変化

長く生きるなら長く働く必要がある、長く働くためにはリスキリングが必要と言われます。でも、何かを始めようと思っても、つい弱気になってしまいがちです。この年齢になって今さら勉強しても、と。

私の場合、学生時代から社会人前半の学びの原動力は、おそらく「根性」でした。

きっかけは小学校2年生頃に、そろばん検定を受けて不合格になった時のこと、不合格になったことというより、勉強もせずに臨んだことがいかに無駄なことかと母にひどく叱られたのです。その後、夜遅くまで必死に勉強し、次の試験で合格した私に「ほらね、やればできるでしょ」と母。あの時の怖い母の印象と、確かにやったらできた達成感とが原体験として刻まれ、以来、明確な目標には「為せば成る」と燃えるようになりました。

しかし、年齢を重ねるうちに、為せば成るとも限らないことを知り、できたとしても、他人の方が圧倒的に上手いことも数知れず、そのうち、やらなくてもある程度その先に待ち受けている状態が想像できるようになりました。未知のものにチャレンジして、伸びしろだらけだった子供の頃とは違い、既知のものに囲まれた大人は伸びしろを探す方が大変です。反対に見つけやすいのは、やらない理由。時間がない、お金がかかる、向いていない。根性を出す前にブレーキがかかってしまいます。

リスキリングの正解探し

リスキリングに躊躇してしまうもうひとつの理由は、正解がわからないからではないでしょうか。

経済通産省のリスキリングの定義は「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」とされています。これからを生き抜くためにスキルが必要であることは明示されていますが、反対に、何のスキルがあれば新しい職業に就けるのか、変化に適応できるのかの答えはわかりません。

仮に私が、デジタル力を磨くためにプログラミングを勉強した場合、プログラマーとして新しい職に就き、70代以降も活躍していくことは考えにくいでしょう。

3ステージの時代には、ある程度正解ルートがあり、与えられた目標を盲目的に追いかけることもできました。しかし、マルチステージ時代には選択肢が多様であり、人それぞれ正解が異なり、ロールモデルといえる存在にもなかなか出会えないものです。

時間やお金をかけて学びに自己投資するからには確実なリターンを求めたくなるものですが、そんな正解が見えないことが、とくにミドル世代にとってはハードルとなっているような気がします。

しかし、「為せば成る」には続きがあります。「為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」。

この中で、いつでも誰にでも当てはまるのは「為さねば成らぬ」だとも思うのです。成就するとは限らない、けれど、やらなかったら始まらない。さて、どちらを選ぶのが良いでしょうか?

学びの先にあるもの

先日当社では、世界最高齢のアプリ開発者として有名な若宮正子さんをお招きしてセミナーを開催しました。若宮さんが初めてパソコンを買ったのが58歳の時、スマートフォン向けアプリ開発は81歳、そう聞くと、アラフィフの私たちも勇気がわいてきますが、一方で、すごすぎて自分とは縁遠いとも感じてしまうかもしれません。

ただ、お話を聞いて私が最初に驚いたのは、88歳の若宮さんが当日お一人でご自宅から新幹線・マリンライナーを乗り継いで高松までいらしたという事実。今回に限らず、全国各地に講演で出向く際にはご自身でチケットを手配し、お一人で移動されるそうです。

私の知る限りの80代後半は、一人で出かけるには心配な年齢ですが、当たり前にそうしている若宮さんが、とても軽やかで素敵にうつりました。

若宮さんのようにアプリ開発で有名になれるとも、めざしたいとも正直思いませんが、例えば新幹線をネット予約して、ICカードでチケットレス乗車できるくらいのデジタル力を持った80代になら、なってみたい気がします。

リスキリングは、仕事のみならず、生き方をアップデートしていくことなのかもしれません。

目標をシフトする

年齢を重ねると、より堅実な目標でないと一歩が踏み出せなくなりますが、ミドル世代こそ、その目標を「実益」からシフトしてみるのはいかがでしょうか。「興味関心のあること」「流行っていること」など、前進あるのみというスタンスで。

考えてみれば、学んで損をすることはありません。時間がかかっても、難しくて途中でやめても、学んだという経験や知識は確実に自分に残ります。そして、思いもよらず、その学びから新たな世界が広がったり、新しい人に出会ったり、副産物が得られることもたくさんあります。

そろばん検定事件で厳しかった私の母は、50歳前後で急にフランス語の勉強を始め、街で見かける看板や、お菓子などの商品名に使われているフランス語を見ると、その読み方や意味を私に解説してくれました。恐らくフランス語の学びによる実益はなかったと思いますが、その姿は楽しそうで、娘としてもなんだか嬉しく思いました。

「学ぶのに遅すぎることはない」と言われます。何歳になっても、将来に渡って今が一番若いというのも明らかです。

私は今からプログラマーで生計は立てられないかもしれませんが、今から学べば、自分次第で「プログラミング歴30年のシニア」にはなれます。

そんなことを考えると、人生100年時代が、ちょっとワクワクしたものに見えてくるかもしれませんね。

【働き方は生き方だ】コラムバックナンバー
第25回
アラフィフ女性の働き方とセカンドキャリア
第26回
スティーブ・ジョブズの経験に学ぶ!派遣社員ならではのキャリア形成
第27回
積み重ねた経験・自信は顔に出る!自分の人生に責任を持とう
第28回オフィスワークの現状。「これまでの自分」を脱ぎ捨て「これからの自分」を育てる
第29回「価値観の違い」への向き合い方と自分のアップデート方法
第30回DXって本当に難しい?まずはチャレンジ!苦手意識を変えていこう!
第31回:ミドル世代のリスキリング 始める理由・始められない理由

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