多くの企業で2025年3月卒業予定の学生を対象とした採用活動が本格化しています。

人材不足を背景に、採用活動は年々早期化が進み、今年は3月1日時点の内定率は既に3割を超えているという民間調査の結果も報道されました。

しかし、内定を保有しながらも、多くの学生が就職活動を継続しているとのデータもあり、企業にとって採用活動は厳しさを増すばかりです。

最近では給与額のアップなどの待遇改善により学生にアピールする動きとともに、学生の親に対してアピールする「オヤカク」も話題になっています。

「オヤカク」とは

採用企業が、内定を出した学生に対して、内定承諾することに親が賛成しているかどうかを確認したり、学生の親に対して直接、内定承諾の確認をとることを指します。

親に確認する「オヤカク(親確)」と言われ、親の反対を理由に内定辞退する学生が増えていることから注目を集め、企業もその対策に力を入れているそうです。中には、親向けに説明会を開催したり、直接手紙を書く企業もあるといいます。

親が関与することに肯定的な意見、反対に過保護すぎるのではないかと心配する意見など、考え方はさまざまです。

社員に聞いたオヤカクの現状

今回、当社の社員数名に実体験をヒアリングしてみました。最近就職活動を経験した若手社員と親世代双方の声をご紹介します。

若手社員の声

若手社員A)

私が相談したのは、就活支援の学生団体のほか、親、友人などです。

親に意見は求めましたが、最終的には自分のやりたいことを優先しました。特に仕事内容に関して、営業職が自分に合っているのか心配されることもありましたが、将来性や、自分の挑戦したい気持ちを信じてもらい入社を決めました。

若手社員B)

相談したのは、両親、大学・高校の先輩、友人です。

親には選考過程の相談はあまりしておらず、〇〇会社落ちた、受かったなどの採否の結果について随時報告していた程度です。そのため特に意見を貰うことがなかったため、参考にしたり影響を受けたりといった要素はなかった気がします。自分自身の志望業界・職種が明確でなかったので、親が勧めた会社にもエントリーしてみましたが、情報収集の一部という感じでした。

友人の中には、自身の意思で選んで内定を得た会社について、親から将来性の面で反対を受けたため辞退した人もいました。友人はその後、親の意向に偏った就活をしていた気がします。

若手社員C)

相談したのは兄と友人です。

私も選考内容や企業選びは両親に相談せず、採否の結果について報告をしていた程度です。

どこの業界・企業にいくかは自身で決断する必要があると思っていたので、親に報告はしても、承諾を得るという意識はなかったですし、とくに反対されることもありませんでした。

就職活動の時は精神的にきつくて、一緒に暮らしていた両親に強く当たってしまい、聞かれても相談できなかったという状況もありました。だめなことをしてしまったと反省し、就活後に謝りました笑 今は、素直に相談しておけばよかったなと少し後悔しています。

親世代の声

親A

どんな仕事に就こうと、どの企業に入ろうと、基本は応援するスタンスです。

人材サービスで仕事をしているからこそわかることもあるので、自分だったらどうするかも考えるとは思いますが、子どもには自分で決めて行動してもらいたいのでアドバイスはあまりしないでおこうかと思っています。

大学入学当初、アルバイト先で自分とは違う意見を押し付けられたといって、即辞めてきた時、「それくらい我慢して続けることも社会人として必要」と意見したら、「相手が悪いのになんでこっちが我慢しなきゃいけないの」と言い返されたことがあります。

その頃から、自分の意見を正としてアドバイスすることってどうなんだろうと思い出しました。

親B

我が家では、娘や息子が進学先を選ぶ時から、目的を持って選ぶようにと話しています。ただなんとなく進学するのではなく、資格の勉強でも、部活でも、内容はなんでもいいので本人が打ち込めるものを目指して選んでほしいと思っています。

就職についても同様に本人の意思を尊重するつもりです。とくに、選ぶ会社については、正直どこも大きな差はないと思っていて、入った会社で本人がいかに取り組むかこそが重要という考えです。

ただ、明らかに本人に不向きな職種を選んできたら、アドバイスはするかもしれませんね。

 

小人数の意見ではありますが、当社の中では、世間で話題にされるほどの強い親の意向は聞かれませんでした。状況を共有しながら、いざという時にはアドバイスする/求める可能性も見えましたが、基本的には自分の意思を大事にするという双方の意向に安堵しました。

それでも私がオヤカクをする理由

私は採用活動において、オヤカクという言葉を意識する前から、親に相談しているかを面接で尋ねることがしばしばありました。

理由として思い浮かぶのは大きく2つで、1つめは応募学生を理解するためです。たとえば学生の自己理解が不足していると感じたとき、あるいは仕事理解が不足していると感じたときに、身近な人からどのように言われるのか、業界研究・仕事研究をどのように進めているのかなどを尋ねる過程でオヤカクに近い質問をすることがあります。

もうひとつの理由は、人材派遣・人材紹介(転職支援)の事業において、これまで多くの「家族による反対」の事例に遭遇してきたからだと思います。たとえば転職にあたって、年収や勤務形態などの条件面で配偶者の反対にあい内定を辞退するケースや、育児ブランクからの仕事再開にあたり派遣で残業のないフルタイムの仕事を決めたものの、家事との両立を配偶者から心配され時短勤務の仕事を探し直すようなケースです。年齢を重ねた大人でも、職業選択のシーンで家族の意向が多分に反映されることは珍しくないのです。

最善の選択とは

人生初の職業選択において、最善のものを選びたいと思うのは当然です。ただ、なにが最善なのかの答えは、人それぞれの中にあるのだと思います。私が一番願うのは、本人が納得して道を選ぶことです。

どのような選択の場面においても、選ばなかった道の方がよかったのではないかと思うことはあります。それでも自分を納得させてくれるのは、自分の意思決定だという事実だと思います。

自分が決めるために足りない情報は、それがわかる人にとことん聞けばいい。面接では必ず学生からの質問時間をしっかり確保しますし、仮に親に相談することで納得できるなら、それも応援したいという気持ちです。当社では、親向けの説明会など特段の取り組みの予定はありませんが、親を納得させるためではなく、本人の意思決定の一助になるならば、検討してもよいかなと思っています。

仮に今後、内定者から辞退されることがあっても「親に反対されたので辞退します」ではなく、「親に反対されたのをきっかけに、自分が~と思ったので辞退します」という理由を聞きたいものです。(もちろん、辞退連絡は受けたくないのですが…。)

弊社では、採用・教育など、あらゆる人的課題に対応しています。お悩みやお困りごとは、こちらからお気軽にお問合せください。