キャリアに関する有名なフレームワークに、WILL CAN MUSTというものがあります。

就職や転職における自己分析や、企業内のキャリア開発などでも利用されているものです。

先日、40代のあるメンバーと面談した際、目標達成を期待されるのが苦しく感じるという話を聞きました。私から見れば、彼女は経験も能力も十分で、安定的に成果もあげている優秀な人材。ただ、とても真面目な性格ゆえMUSTに着目しすぎて窮屈になっているように見えました。もともと好きな仕事も、ある程度経験を積むと「できた」という感覚も薄れ、逆に課せられている責任の重圧を感じるようになってしまうので、彼女には、もっとWILLに着目してみてはどうかと提案しました。

しかし自分に置き換えて考えようとすると、意外と難しいことに気づきました。とくにWILLが言語化しにくいのです。そこで改めて、年齢とともに変化するWILL CAN MUSTについて整理してみることにしました。

WILL CAN MUSTとは

  • WILL 自分がしたいこと
    仕事で叶えたい希望、願望、夢など。
    WILLが満たされることはモチベーションにもつながります。

  • CAN 自分ができること
    仕事で活かせるスキル、能力、知識、資格、強み、長所など。
    仕事でCANが発揮されることで成果につながります。

  • MUST 自分がすべきこと
    会社から求められている役割、期待、義務など。
    MUSTに応えることで組織からの評価を得、効力感につながります。

この3つが重なる領域が、自身がもっとも満足できる仕事であると言われています。

年齢とともに変化するWILL CAN MUST

私自身のキャリアを振り返ると、20代は小さなCANを大きくすることに意欲的に取り組んだ時期、30代はWILL CAN MUSTのバランスがとれ、重なりが最大化して充実した時期、40代はMUST優位でバランスが崩れている時期のように感じます。

まず20代のキャリアの初期は、経験・知識などが圧倒的に不足しているため、会社から求められるMUSTに応えられるように努力することで、CANが大きくなり、そして評価ももらえました。

ビジネスマナーが身についた、客先に一人で訪問できるようになった、プレゼン資料が作れるようになった、後輩の指導ができるようになったなど、成長をダイレクトに実感することが楽しさでもありました。

30代になると、求められるのはプロジェクトの運営、メンバーの育成、チームのマネジメントなどに変化してきますが、初めてのことを任されたり、その責任が重くなったり、それでもそれを乗り越えた時に、さらに達成感と充実感を持ちました。WILL CAN MUSTそれぞれが拡大し、3つの輪の重なりが最も大きかったように思います。

ただ40代からは、成長実感を持つ機会が少なくなってきたように思います。理由はさまざまあると思いますが、経験済みのことが増えて新鮮味が減少すること、業務のパーツではなく全体の成果が求められること、より中長期的な視点が必要となるため、短期的に成果を感じにくいこと、自分個人ではなく組織全体の責任を負うこと、などが考えられます。MUSTばかりが大きく感じられる状態です。

ミドル世代こそWILLを磨く

今ではWILLの言語化が難しいと感じる私も、就職活動をしていた学生時代はWILLに溢れていました。自分ができるかどうか、会社から求められているかはさておき、純粋にやりたいことを志望動機などで語っていたと思います。

当時の私は、普及の途上にあった人材派遣というサービスに大きな魅力を感じました。まだまだ一社で定年まで勤めあげるのが当たり前の時代でしたが、自分の意思で自分が働く職種・職場を選ぶという働き方は、人生の選択肢を増やし、そして豊かにすると感じたのです。いきいきと働き暮らす人が増え、それが当たり前の社会をつくっていくことに、貢献したいと夢見ました。

これを書きながら、今もその想いは変わっていないことに気づかされましたが、歳を重ねるにつれ、夢を語ることより、現実的な道を歩む癖がついてしまったように思います。先にある大きな目的より、目の前にある手段に気を取られて、やりがいや自信を見失いがちです。冒頭で触れた彼女もそうかもしれません。

なんとなく自分のキャリアに自信がもてなくなったら、本来持っているはずのWILLを思い出し、磨きをかけることが有効なのではないでしょうか。

積み重ねてきたCANを基盤に

WILL CAN MUSTを使ったキャリア研修は、どちらかというと若年層向けに実施されることが多いイメージがありますが、私は40代、50代こそ、このフレームをつかってみるのが良いのではないかと思っています。

MUST優位で小さく感じてしまうCANは、よく考えれば20代30代の経験の積み重ねで、相応に大きくなっているはずです。それを言語化し客観的に整理することで、自分の強みやスキル、今後の方向性を明確化することができると思います。

会社軸で考えてきたWILL CAN MUSTを、自分軸に変換して再定義するのです。ここから先、生涯をかけて取り組みたいことが見えてくるかもしれません。

弊社では、各種研修やキャリアコンサルティングサービスも取り扱っております。ご関心のある方はこちらまでお問合せください。