3月に入り、2024年卒の新卒採用活動が本格化しているかと思います。

新卒採用の面接における定番の質問といえば「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」。しかし、コロナ禍の大学生活ではガクチカが無いと悩む学生が多いのと同時に、企業側も採用面接ではガクチカを聞かないという声を聞くようになりました。

今回は、この定番の質問をやめるべきかについて考えてみたいと思います。

ガクチカとは?

あらためてガクチカとは「学生時代に力を入れたこと」を略した就職活動用語です。就職活動を行う学生、企業の採用担当者には広く知られています。学生が応募する際のエントリーシートや採用面接における質問として、「自己PR」「志望動機」と並んでほぼ確実に問われる項目です。略語が無かった頃から長きに渡って重要視されている質問だと言えます。

実務経験のない学生の採用においては、仕事に取り組む姿勢や能力を知ることは難しいものですが、学生時代のエピソードを聞くことで、物事に取り組む意欲や姿勢、困難を克服する力などのポテンシャルを見極め、自社が求める人物像とマッチしているかどうかを確認しています。

ガクチカが無いと悩む学生

ガクチカの内容は、一般的に大学生活でのサークル活動、アルバイト経験、ボランティアなど、学業以外にどのような取り組みをしてきたかが取り上げられます。しかし、今、就職活動中の2024年卒の学生が大学に入学したのは2020年春、まさに新型コロナウィルスの流行が始まり、世界中が大混乱している時でした。

大学の入学式は行われず、不慣れなオンライン授業を受け、サークル活動も休止。新しい友人をつくるのも困難で、飲食などのアルバイトもできないという、制限だらけの学生生活を送ってきた世代です。

実際、最近当社で面接した学生たちからも、「県外の大学に進学し転居したものの、オンライン授業しかなかったので実家に戻った」「大学に通学できるようになったのは2年次の途中から」などの経験が語られています。

思い描いた学生生活からは程遠く、「力を入れた」とアピールできるほどには、課外活動に取り組めていないと悩む学生が多いようです。

なぜガクチカを質問するのか

就職活動において、自分をよく見せたいと思うのは当然の心理です。ガクチカも、「全国大会に出場した」「学生団体を立ち上げた」「海外留学した」など、なるべく華々しいエピソードを披露したいと考えるでしょう。学生にとっては、特別感のないことをガクチカとしては伝えにくいものです。中には、ガクチカを作るためにボランティアやインターンシップに参加する学生もいる程です。

ただ、採用担当者がガクチカで示される輝かしい結果で合否を判定しているかというと、それは違うのではないかと思います。

もちろん会社によって基準は異なるものの、出来事や結果より、プロセスや感情に着目しているのではないでしょうか。当社の場合も、なぜその取り組みに力を入れたのか、その過程で周囲とどのように関わったのか、経験を通して何を学びどのように感じたのか等を重視しています。モチベーションの源泉やチームワークを探ることで、その学生の人物像をとらえようとしているのです。

もうガクチカは質問しない?

最近、大手企業が採用面接でのガクチカ質問を廃止したと発表したことが話題になりました。コロナ禍で不自由な大学生活を送った学生に配慮して、ガクチカ質問はやめた方がいい、ガクチカを聞くのはもう時代遅れなのでは、そんな意見も聞かれます。皆さまの会社ではいかがでしょうか。

私自身も今回質問の見直しを検討しました。しかし進行中の採用活動ではまだガクチカを質問しています。

ただ、心掛けているのは、その内容だけで「他の学生と似たり寄ったりだな、差別化できていないな」などと簡単に判断しないことです。

質問はあくまで対話のきっかけ。「接客のアルバイトを通してコミュニケーション能力が身につきました」という発言を聞くと、あまり特徴のない内容だと思いがちですが、そのお店を選んだ理由、接客における工夫、お客様や店員からの声、失敗や苦労した経験などを掘り下げていくと、その学生なりのキラリと光る個性が見えてくるものです。

「力を入れたこと=特筆すべき成功体験」ではなく、目立たない経験が評価されることがあるという事実を、学生たち、そして採用担当者の方々とも共有したいと考えています。

選ぶと同時に選ばれている

採用活動は企業が学生を選ぶ場とはいえ、同時に学生も企業を選んでいます。行動制限の中で大学生活を送ってきた学生たちにとっては、社会との接点も限られ、職業理解を深める機会も少なかったかもしれません。それゆえに、今年の面接では、社員との接点を通して感じた「人柄」「雰囲気」を重視する傾向が、例年よりさらに強くなっていると感じています。

学生側もガクチカを質問されたからといって、配慮がない会社だと判断することはほぼないでしょう。大切なのは、なにを質問するかより、学生と採用担当者がお互いに尊重し合いながら対話すること。その中から、学生・企業の双方にとって、最高の出会いが生まれることを願っています。

弊社では、採用・教育など、あらゆる人的課題に対応しています。お悩みやお困りごとは、こちらからお気軽にお問合せください。