障がい者の『定着』という課題

昨年末、厚生労働省より令和4年の障がい者の雇用状況が発表されました。

民間企業の雇用障がい者数と実雇用率が19年連続で過去最高を更新しています。

また障がい種別では、前年対比で身体障がい者-0.4%、知的障がい者+4.1%、精神障がい者+11.9%と、精神障がい者の伸び率が大きくなっています。

これは、企業の障がい者雇用に対するニーズが拡大し、今まで身体障がい者しか採用しなかった企業も精神障がい者を採用するケースが増えている結果かと思います。

一方雇用する障がい者の人数や範囲の拡大に伴い、定着に課題を抱える企業も増えているのではないでしょうか。

厚生労働省の発表によると、入社後1年の職場定着率は身体障がい者60.8%、知的障がい者68.0%、精神障がい者49.3%と、雇用者数が大きく伸びている精神障がい者の退職が多い現状が伺えます。

退職理由としては、「職場環境・人間関係」と一般的なものと変わりないのですが、障がい特性によっては、健常者よりセンシティブに反応する傾向があるため、定着には一定の配慮が必要となります。

それでは、せっかく採用した方に長く働いてもらうために、必要な配慮や取り組みをどのように決めていけばよいのでしょうか。

14名の障がい者が働く障がい者雇用サテライトオフィス「ウェル工房」を運営する中で、長く働いてもらうために、最初に実施したほうが良いと思ったことを今回はご紹介させていただきます。

障がい者との向き合い方:障がい特性<個性

障がい者の就業において、その特性・症状に合った配慮が必要で、この特性にはこの配慮方法といったようなセオリー的なものを良く見ます。

私も障がい者雇用支援事業を始めるにあたっては、ネット等で様々な障がい特性やその対応方法を検索し、そのセオリーに従って実際に障がい者に対応していました。

しかしながら、コミュニケーションをとっていく中で、どうもしっくりこない、うまく意思疎通が出来ないというように感じたことがありました。

確かに障がいの種類に応じた一定の症状があるのですが、精神的な疾患である以上、どうしても個人のパーソナリティが大きく関係してくるため、セオリー通りの配慮だけでは定着が難しいケースがあります。

その為現在ウェル工房では、業務開始前に、好きなこと得意なこと、嫌いなこと苦手なことなどをアンケート形式で答えてもらい、それを元に約1~2時間をかけての聞き取りを行っています。

またこの聞き取りの際には、障がい者に好きなように話してもらい、決して否定や反論はせず、承認の姿勢で臨むようにしています。

どのような配慮が必要なのか障がい者本人から聞けるだけでなく、性格や考え方、嗜好を理解することにより、本人から聞けない配慮のポイントが見えてきます。

障がい者にとっても、自身の事を理解してくれる職場という安心感にもつながり、緊張や不安からくるストレスを軽減できることで、安定した就業につながるきっかけになると感じています。

障がい特性や症状は、あくまでその人のアウトラインを理解するものと捉え、業務を始めるにあたっては、個人を理解するために、まずはじっくりと会話することから始めてはいかがでしょうか。