Excel の "名前" について何回かに分けてご紹介しています。
今回は、その 1 とその 2 で作成方法をご紹介した "名前" を数式で使うための基本についてご紹介します。
考え方や機能はどのバージョンでも差異はないのですが、今回は Excel 2013 で画面を載せています。
"名前" を使わない数式 (セル参照)
たとえば、とあるセルの内容を表示しようと思ったら、「=セル番地」という数式を作成します。
こんな風に↓
また、関数の引数にセル範囲を指定して計算することもあります。
こんな風に↓
あとから数式をコピーすることを考えたら、セルやセル範囲が、コピーした際にずれてしまわないように絶対参照にすることもあります。
こんな風に↓
このセルやセル範囲に対して "名前" が定義されているとき、数式で "名前" を使うにはどうするのか、また、そのメリットについて見てみましょう。
"名前" を使った数式
"名前" だということを意識しなくても、名前が定義されているセルを選択すれば、数式に "名前" が指定されます。
たとえば、「=」を入力して参照したいセルをクリックして指定すると、(そのセルに名前が定義されていれば) セル番地ではなく名前が数式に表示されます。
もしくは、「=」を入力したあとで、(定義されている "名前" である) 「合計金額」と、普通に入力してもよいです。
"名前" の参照範囲は、カラーリファレンスによって色がついて表示されます。
ブック内にたくさんの "名前" があって正式な "名前" がわからないとか、参照したいセルが離れた場所にあってクリックしづらいとか、そんなときは、[数式で使用] の一覧から "名前" を選択することもできます。
単純な参照であれば、セルを選択した状態で、リボンの [数式] タブの [定義された名前] グループの [数式で使用] をクリックし、一覧から使う "名前" をクリックして選択します。
数式を確定すると、"名前" の参照範囲となっているセルの値が表示されます。
関数の引数などとしてセル範囲をドラッグして選択したときも、そのセル範囲に "名前" が定義されていれば、「C6:C10」などのセル範囲ではなく "名前" が指定されます。
数式で "名前" を使うメリット
VLOOKUP 関数を例にメリットの一例をご紹介。
たとえば、社員番号を入力するとその人の名前や内線番号を調べられる仕組みを作ってあるとします。
下図のシートでは、社員番号を入力するセルに「社員番号」、参照する別表のデータ部分に「内線リスト」という "名前" が定義されています。
「社員名」を表示したいセルに、検索値として "社員番号" を、検索範囲として "内線リスト" を指定した VLOOKUP 関数を使った数式を作成します。
この場合、「内線番号」を表示したいセルに数式をコピーすることを考えたとしても、"名前" はどのセルから見ても固定された場所 (セルやセル範囲) であるため、セルやセル範囲に対する絶対参照への変更を明示的に行う必要がありません。
単純に、数式がシンプルにすっきりと表示されるため、あとからのメンテナンスや作成者と利用者が違う場合にも、可読性の高い数式とすることもできます。
また、参照している別表にデータが追加されたとき、セル参照をしている場合は、「数式を」編集しなければならないため、修正すべき場所は 2 ヶ所になってしまいます。
参照している別表が "名前" の場合は、数式ではなく、登録されている "名前" の参照範囲を編集します。
[名前の管理] ダイアログ ボックスを表示して、参照範囲を変更したい "名前" を選択し、[参照範囲] ボックスに変更後の範囲を指定します。(範囲の変更後は、メッセージにそって変更を保存して、ダイアログ ボックスを閉じます。)
この場合は、数式を編集しなくても、範囲側 ("名前" の参照範囲) が変更されるため、最新の状態に更新できます。
"名前" を使わなくてもよいこと、"名前" を使ったほうがよいこと、"名前" を使わないとできないこと、があります。
たとえば、最初の例でお伝えした単一のセルを参照する数式を 1 つしか作らないのであれば、正直、どっちでもいいですよね。
ただ、わかりやすさという意味では "名前" を使うほうがほんの少しだけリードでしょうか。
修正すべき場所が増える = ミスが起こる可能性が高くなる、ということを考えれば、VLOOKUP でご紹介したような例は、"名前" を使ったほうがよいことの 1 つだと思います。
あとは、誰かが作ったワークシートを編集しているときに、セル番地やセル範囲ではなくて、名前らしき文字が指定されたときに、それが "名前" であるということを理解できることも大切だと思います。
石田かのこ