こんにちは。キャリアコンサルタントの大塚 敬三です。

企業の人材不足は「転職のチャンス」?

 

「有効求人倍率の記録を更新」「人手不足によって企業が倒産・廃業に追い込まれている」など、人材不足に関する深刻なニュースが毎日のように流れています。

中途転職市場においても、企業からの求人数は増加傾向が続いています。有効求人倍率を見ると、1人の求職者に対して、職種によっては2~7倍の求人があるという、まさに空前の売り手市場です。

最近では、この状況を転職のチャンスと考え「今なら良い転職先があるのではないか?」という期待を抱いて相談にお越しになる方が多くなっています。そして、「もっと年収をあげたい」「休みが取りやすい会社がいい」「体力的に負担の少ない仕事がしたい」「通勤時間を短くしたい」など、より良い条件を求めていらっしゃいます。

でも、チャンスだからといって飛びつくのは危険。転職は人生の中でも大きな転機です。

したがって、このような希望をお聞きした場合、私は敢えて、キャリアカウンセリングに力を入れています。

チャンスを殺すも活かすも自分次第

自分の「転職理由」に真剣に向き合うことの大切さ

どのような方でも、現状の仕事内容や職場、待遇などに対して、多少なりとも不満を持っているものです。転職を機に、より良いワークライフバランスの実現を思い描くものも当然だと思いますし、実際に、今は好条件の求人に出会える可能性も高いはずです。

もし、短期のアルバイトを探すなら、今は好待遇の仕事を探すまたとない好機と言えるでしょう。でも、人生100年時代と言われている今、多くの方にとっては、これからのキャリアの方が長いという現実があります。

景気が悪化したら、転職先の企業の業績が低迷したら、人間関係で困ったら、家庭環境が変わったら、、、
この先起こることは予想がつきません。
その時に、自分の仕事に対する軸がしっかりしていれば、問題を乗り越えようという力になります。

仕事そのもののやりがいや、将来のキャリアプランなど、大切にすべきことが見過ごされないようにサポートするのが、私の役割だと考えています。

事務職は「超売り手市場」ではありません!

多くの人が事務職希望を良いというけれど…

先日、20代の女性求職者の方が転職相談にお見えになりました。これまで続けてきた営業職は疲れたので、もっと楽に働けそうな事務職で探したいというご相談です。

しかし、12月の「一般事務の職業」の求人倍率は0.37倍と、人あたり1件を大きく割り込んでいます。(※常用求人でパート除く数値。)売り手市場の現在にあっても、事務職の正社員は、引き続き狭き門であることを、まずお伝えしました。

そしてその後、これまでのご経験を振り返っていただくと、営業職の仕事をとおしてお客さまに喜んでいただいたエピソードや、いただいた感謝の言葉などを、とてもいきいきとお話しされるのです。

営業職は大変で事務職は楽??

一方で、事務職を希望する理由をお尋ねすると、「パソコンは使えるから自分にもできそう」「営業よりも数字のプレッシャーがなさそう」「デスクワークだと体力的に楽そう」など、漠然としたイメージが先行してしまっている印象を受けました。

これまでの営業職に近い業種や部門なら事務職でも経験が活かせるのではないか、もしかすると違う業種なら営業の仕事を続けられるかもしれない、営業の仕事を通して培ったお客様との信頼関係を構築するコミュニケーション力が強みだ、など、さまざまなお話をする中で、その求職者の方自身も、転職への考えが明確になってきたようでした。

「自分だからこそ」を考える

 

IT技術の発達によって、社会は大きく変わろうとしています。

今は人手が足りなくても、数年先にはITに取って代わられるだろう仕事も少なくありません。事務職員が対応していた業務はAIが一瞬でこなし、販売職員が対応していた接客業務は無人店舗に置き換えられ、ホテルのルームサービスはロボットが運ぶ。また、会社はコスト部門を外部委託化したり、雇用リスク低減のために非正規雇用の割合を増加させていくでしょう。

人間だからこそ、自分だからこそ提供できる「付加価値」は何か?そこをしっかり持つことができれば、世の中が買い手市場化しても、有効求人倍率が低くても、きっと自分らしい転職ができるはずです。

取って代わることのできない「自分」という働き手の価値を、一緒に見つけていきませんか?