今住んでいる地域から離れた場所の会社へ転職するUターン・Iターン転職の場合、どうしてもハードルになるのが物理的な距離ですね。情報収集するにも、面接に行くにも、家を探すにも、気軽に行き来することができません。

UターンやIターンを心に決めた方は、先に退職・引越しして、時間も気持ちも余裕をもって転職活動を進めたいと考える方も多くいます。しかし、転職エージェントとして多くの方の転職をサポートしてきた私たちがいつもオススメするのは、引越しよりも前にまず転職を決めること。それにはこういう理由があるからです。

転職先が決まってから引っ越しをすすめる3つの理由

焦らず余裕をもって転職活動ができる

在職中のまま転職活動するのをオススメする最大の理由は、金銭的・精神的な余裕が持てるという点です。

転職は人生の大きな転機であり、ライフスタイル全体にさまざまな影響を及ぼします。自分にとって、家族にとって、そして今だけでなく将来に向けて、最適と思える転職先と出会うには、運やタイミングなど、自身ではコントロールできない要素も重要なカギになります。つまり、予定どおり行かないことも多いのです。

退職して仕事に就いていない期間が長くなると、早く決めないといけないという焦りから、転職先の選定において冷静な判断ができなくなってしまうことがあります。急いで決めた転職先が結果的に希望にあわず、早期で離職することになってしまったケースも残念ながら多く見てきました。

ブランクの期間が長くあいてしまったり、短期離職をしている場合、職務経歴書上の印象も良いとはいえず、以降の転職活動において負担になることが考えられます。

また、地方への転職を考えた場合、都市部と比べると、地方には会社の数が圧倒的に少なく、当然求人数も少ないのが事実です。その地域の産業構造や経済動向などによっても求人のバラエティやその数に偏りがあるので、売り手市場といわれる今の時期であっても、チャンスがいくらでも転がっているとは言い難いのです。希望条件によっては、転職活動期間が長期化する可能性もありますので、十分に余裕をもった計画を立てることが重要です。

通勤に便利な場所を選べる

都心部であれば公共交通機関が発達しているので、勤務地がどこになっても影響は少ないのかもしれません。

しかしながら、地方の場合は事情が違います。例えば、弊社は香川県内に2つの事業所がありますが、車で30分以上、電車だと乗り継ぎ等の状況によってさらに時間がかかります。

地方企業は郊外に事務所を構えていることも多く、広範囲に会社が点在しています。

統計によると、地方での平均通勤時間は30分以内のところがほとんど。せっかく都市部からのUターン・Iターンで通勤ラッシュから逃れられると期待したのに、遠方までの通勤に時間をとられてしまっては、もったいないかもしれません。

都市部と地方では、通勤スタイルや距離感なども異なるので、勤務地の場所を考慮して住まいを決める方が便利なのです。

社宅や費用補助がある場合も

転職して新たに勤める会社によっては、社宅が利用できる場合もあります。

また住宅手当等の補助制度に見合う住居を探すことで、転職後の生活費負担が軽減できる可能性もあります。転居には、敷金礼金や引越し代などまとまった費用がかかるので、なるべく1度で済ませたいところです。

また最近では、移住者の受け入れに積極的な自治体が、他の地域からの移住者に対して、移住奨励金の交付や、住宅・子育てに関わる費用の補助など、さまざまな支援策を講じています。

賃貸住宅の家賃補助、住居購入やリフォームの助成、空き家の斡旋など内容はさまざまですが、中にはなんと100万円ほどの補助が受けられるケースもあります。もちろんこれを目的に転職先を選ぶわけにはいきませんが、どのような支援策があるかを調べてみると、思わぬお得なことがあるかもしれませんね。

Uターン・Iターン転職において気をつける3つのポイント

転職活動で本気度が問われる?

在職中のままUターン・Iターンの転職活動を進めた場合、採用企業側の担当者からは、不安を持たれるケースもあるのが事実です。企業としては、採用するからにはその人に長期的に活躍してほしいところですが、「本当にわざわざ引っ越してくるだろうか?」「地方暮らしへの憧れだけではないのか?」「地域や会社に馴染んでくれるだろうか?」といった、Uターン・Iターンならではの不安要素がつきまといます。ここであなたの『本気度』が問われるのです。

この地域で、この会社で、どのような仕事で貢献し、この先の人生どうありたいのか、通常の「志望動機」に加え「移住動機」もあわせてしっかり整理しておくことが重要です。

余談になりますが、Uターン・Iターンのときの志望動機は、このコラムが参考になります。
(参考)転居を伴う転職の志望動機に何を伝えるか。Uターン・Iターンの動機から志望動機を考えよう!

入社日までのスケジュールが心配

転職活動の期間は、3か月~6か月というのが一般的ですが、Uターン・Iターン転職の場合は、先述どおり求人数に限りがあることや、面接などのスケジュール調整に時間を要することもあるので、もう少し長期的な計画をたてておくことをお勧めしています。

また、内定が出てから入社までの期間についても、住居探しや引越し、諸手続きを考慮して、少し余裕を持っておく必要があります。

採用企業が、内定から入社までどの程度の期間待ってくれるかは、業種や職種、会社の人員体制などによるので一概には言えませんが、現職中であれば1~2か月というのが一般的です。3か月を超えるとなると、会社の事業の状況や予算、採用ニーズなどが変わってくる可能性があるので、事情がある場合は面接等の段階からきちんと相談しておくと良いでしょう。

家族の仕事や子どもの就学などの影響も考えよう

Uターン・Iターン転職で忘れてはいけないのが、家族との相談です。

家庭を持っている場合、環境や生活サイクル、収入などの変化、引越しの負荷など、周囲への影響も大きくなります。内定が出て現実的になってから話せばいいなどと思っていると、思わぬ抵抗にあったり、計画に支障が出ることも多くあります。

家族全体の事情を検討した結果、妻の実家近くに移住する「嫁ターン」を選択するケースも増えていますので、家族の仕事のこと、学校のことも考慮して、早め早めに相談しておくことが大切です。

「子どもが小学校に上がる前に」というのであれば、転居先の小学校の入学手続きまでに引っ越しができるように、そのタイミングからさかのぼって早目に転職活動を始めることが必要ですし、ご家族が仕事をしている場合は、その方の転職・退職のタイミングもしっかり考慮しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

Uターンで実家に戻るというような住まいが決まっている場合もありますが、引っ越しも転職も人生においては大きな転機になります。仕事も住まいも焦らずにひとつづつ考えていくのがとよいと思います。転職については、その地方に地盤がある転職エージェントや、自治体の移住・転職窓口などに相談するのもひとつの手です。

思い描いているライフプランをUターン・Iターン、転職でぜひ実現させてください。