前回は、障がい者雇用の基本制度についてご紹介しました。今回は、採用活動を行う前段階である事前準備や、雇用制度についてご紹介いたします。

まずは障がい者雇用の基本制度について、少し復習をしましょう。

障がい者雇用 基本制度の復習

雇用義務制度

・従業員数43.5人以上の事業主には、障害者雇用率2.3%を達成する義務がある。

・雇用義務を履行しない事業主には、ハローワークから行政指導が入り、改善が見られない場合は、企業名が公表される。

納付金制度

【納付金】
雇用率未達成の事業主は、不足1人につき月額5万円を徴収される(常用労働者が100人を超える場合)

【調整金】
雇用率を達成している事業主は、超えて雇用している障がい者1人につき月額2万7千円が支給される(常用労働者が100人を超える場合)

その他、作業施設設置等助成金などもあります。

※上記何れも2021年4月時点
※対象となる「障がい者」の範囲
身体障害者手帳(1~6級)、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方。

障がい者の職業安定を図るため、障害者雇用促進法に基づいて、私たちは障がい者雇用を進めていかなければなりません。

最近活発になっているSDGsへの取り組みでは、障がい者雇用は主に『8.働きがいも経済成長も』の目標が該当します。

障がい者雇用の現状を知ろう!

養護学校学生の就職現状

以前、ウェル工房(当社が運営する、障がい者雇用サテライトオフィス)では、養護学校から1か月間、職場体験の受け入れを行いました。その時、養護学校の先生が「実際に就職するときは、最低賃金での受け入れ企業様も多い」とおっしゃっていました。

これが養護学校の学生が就職するときの現状のようです。

各自の希望や能力に応じた仕事に就き、安定した収入を得ること、そして経済的に自立した生活を送ることは難しいんだな・・と感じました。

正社員と同じ業務をしてもらう事は難しいけど、手順を分解して、最大限に障がい者の能力を発揮できるように企業側が工夫をすれば、活躍できる場面を増やすことができると思います。それに伴って賃金も上昇するはずです。

求人情報の現状

ハローワークの障がい者向けの求人を見てみると、お給料のいい求人情報もあります。

しかし募集している業務内容に対して、どのような種類の障害の、どの程度の障がいレベルの方を想定しているかということが、明確には記されていないことが多いのです。

香川県内民間企業の現状

各自治体により状況は様々ですが、例えば香川県内の民間企業の障がい者実雇用率は2.08%(2020年6月時点)。少なくとも、あと554.5人の雇用が進まなければ雇用率は達成できません。

新規求職者の登録数は年々増えていますが、雇用が進まない現状があるということは、障がい者を採用するまでのどこかのタイミングで、雇用主と求職者の間にミスマッチが発生していると考えられます。入社が決まったあと、定着がしにくいという点も関係があるかもしれません。

ミスマッチを防ぐためには、専門の機関に相談することをお勧めします。

障がい者雇用に取り組む際に相談できる、専門機関

まず、障がい者雇用に取り組む際に、企業側が相談できる主な機関は以下です。

・ハローワーク

・地域障害者職業センター

・障がい者就業・生活支援センター

何れの機関も、就職希望の障がい者の支援を行っているため、実態をよく把握しており、雇用を希望する企業に対して、職場配置・職務設計・雇用管理上や職場で配慮すべきこと、業務指導方法についての助言を行っています。

採用計画の段階から、募集・採用活動、採用決定に至るまで、あらゆる場面で連携し、活用していきましょう。

雇用制度を利用してみよう!

以下のような制度もありますので、積極的に取り入れてみましょう。(2021年6月現在)

障害者トライアル雇用

障がい者トライアル雇用の制度を活用することで、障がい者雇用への不安を解消することができます。

まずハローワークの紹介により、障がい者を短期の間、試行的・段階的に雇い入れ、障がい者雇用への理解を深めます。そしてトライアル後に問題が無ければ、常用雇用へ移行することが可能です。

障がい者トライアル雇用助成金も支給されます。
〈精神障害者以外の場合〉支給対象者1人につき月額最大4万円(最長3か月間)
〈精神障害者の場合〉支給対象者1人につき、3か月間は月額最大8万円、4か月目以降は月額最大4万円(最長6か月)

障がい者職場実習受け入れ

実習期間を設け、職場体験のような形で業務実習生を受け入れることができます。

窓口は、「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」です。

障がい者雇用をしたことがない、イメージがわかないという企業様は、これらの制度を利用してもいいかもしれません。

障がい者の作業の様子を実際にみて、特性を理解し、労働能力を確認し、相互の理解ができた上で、採用へのステップを踏むことができます。

この期間に、企業側は必要な準備(心構え、環境整備)をすることができます。

まとめ

今回は、採用活動を行う前段階までをまとめてきました。

募集活動を行う際は、障がい者雇用の求人票を作成する前に、まずは適正な労働条件を確認し、障がい者が実施可能な業務内容であるかなど、しっかりとした下調べや事前準備を行うことが大切です。雇用制度や専門のサポート機関も効果的に利用してみましょう。

そして、採用できないという状況や、入社後の相互のギャップを少なくし、ミスマッチのない雇用と就業定着を目指しましょう。

次回は、採用活動に入っていきます。

障がい者雇用に関してご相談がある方は、こちらまでお気軽にご連絡ください。
何かお手伝いできることがあるかもしれません。

【ここが大変だよ!障がい者雇用】

第1回ここが大変だよ!障がい者雇用~「基本の基」編~
第2回:障がい者雇用を始める!採用活動の準備をしよう