こんにちは。

今期(2021年度)に入って、大手企業のキャリア採用ページに「中途採用比率」という数字が掲載されるようになりました。このコラムをご覧の方の中には、転職活動の情報収集をしているときに何度か目にしたことがある、という方もいらっしゃるでしょう。

これは労働施策総合推進法の改正により、2021年4月以降、常時雇用する労働者が301人以上の企業を対象に、中途採用比率の公表が義務化されたことによるものです。

公表するのは直近の3事業年度分ですので、2021年度は、2018年度から2020年度分まで公表されます。この期間、それぞれの年度において正規雇用した労働者のうち、中途採用者が占める比率が何パーセントなのかが掲載されます。

(例)労働施策総合推進法に基づく中途採用比率の公表

正規雇用労働者の中途採用比率

2018年度

2019年度

2020年度

33%

40%

25%

中途採用比率の公表は何のためか?

厚生労働省が公開しているリーフレットによると、今回の公表義務化の趣旨・目的は「労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的としています」とあります。

少し難しい言い回しですが、要するにこれまで新卒一括採用を中心としており、中途採用に消極的だった大企業に、多様な採用を促し、転職や中途採用が広く受け入れられる社会にしていきたいという政府の考えがあるようです。

実際に今年度(2021年度)1年をかけて、徐々に中途採用比率の公表は進んでいきますので、同業他社間や業界ごとに中途採用比率が比較できるようになります。

企業側からすると同じ業界の会社でも中途採用に積極的な会社とそうでない会社、中途採用者がたくさんいる業界とそうでない業界という比較をされるようになるため、今後の採用戦略を考える上で、重要なポイントとなってくるでしょう。

転職希望者は中途採用比率のデータをどう読むか

今回の中途採用比率公表義務化は、企業の人事担当者の中では、公表に向けて準備を進めるため話題にもなっていましたが、転職希望者の中ではあまり話題にはなっていないように感じます。まだデータが出揃っていないため比較しにくいという状況もあるでしょう。

今回の中途採用比率公表については以下の点にご注意ください。

公表の時期は企業によってまちまちである

2021年4月以降に直近3事業年度のデータの公表が義務になっていますが、2020年度の採用活動が終了する時期は企業によってまちまちであるため、公表の期限は2021年4月以降の最新の事業年度とだけ決まっている状況です。

公表できる状態となってから随時公開されるようになりますので、今年度中はデータが公表されている会社とそうでない会社が混在することになるでしょう。

常時雇用する労働者300人以下の中小企業は対象外

一般的に中小企業は中途採用に積極的であるため、今回の義務化措置の対象外とされています。

地方企業では常時雇用する労働者が301人を超える会社は限られるため、志望企業が公表義務化の対象でない場合、データを公開していないケースはあるでしょう。

中途採用比率は正規雇用労働者に占める中途採用の割合である

正規雇用労働者以外の方は公表データには含まれません。

私の担当する求人企業の中には、新卒採用は入社時から正社員ですが、中途採用に限っては入社時に契約社員で雇用し、後に正社員に転換する方針にしているところがあります。

この会社ですと正規雇用の中途採用比率が0%になるので、今後どのようにしていくのか、採用方針に影響を与えそうです。

転職活動中の皆さんからすると今回のデータから、中途採用比率の多い会社、少ない会社、増えている会社、減っている会社というのが読み取れるようになります。

面接のときにデータの推移をもとに質問をしてみると、求人背景の変化などが読み取れる場合があるかもしれません。

応募先企業がデータを公表していた場合は、以下のような質問を投げかけてみると、求人の背景が伺えるかもしれませんね。

  • 「中途採用比率が年々上がっている(下がっている)ようですが何か理由がありますか」
  • 「中途採用比率が高い(低い)のには何か理由がありますでしょうか。」

転職についてのご相談や、仕事について専門家の話を聞いてみたいと思われた方は、私たちクリエアナブキのキャリアコンサルタントにご相談ください。