採用, 障がい者雇用
障がい者雇用をお考えの企業様から、最も多く聞かれるお悩みは「採用したくてもお願いする業務がない」という内容です。
採用における課題といえば、お願いしたい業務があるのに、要件に合う人がいないというのが一般的ですが、障がい者雇用における課題はそれとは正反対といえます。
今回はこの課題について考えてみたいと思います。
厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書によると、障害者を雇用しない理由のトップは、障害の種類を問わず「当該障害者に適した業務がないから」という回答です。
図1:障害者を雇用しない理由別事業所数の割合(複数回答)
出典:「令和5年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html)(参照 2024-11-01)
類似した設問で、障害者を雇用する際の課題も「会社内に適当な仕事があるか」が最も多く7割超の事業所が回答しており、ノウハウ、安全配慮、適性見極めの課題をあげる割合(4割程度)を大きく上回っています。
一般的にイメージするのは下記のような業務ではないでしょうか。
・定型的で、同じことを反復する業務
・専門的な知識や判断を必要としない業務
・他者との連絡、調整が少ない業務
・緊急度が低く、定常的に発生する業務
例えば工場内での製造・加工など、特定の工程を担当し、繰り返し同じ作業を行うような業務が想像できます。実際、商社やサービス業などのお客様からは、「当社は製造業ではないので」という前置きで、障がい者雇用に適した業務がないという声をお聞きします。
その一方で、製造業のお客様からは、作業の自動化により軽易な業務がないことや、安全配慮の観点から工場内での障がい者雇用が難しいという声が多いのです。
では事務的な業務はというと、データ入力、郵便物の仕分け、書類整理などの業務はあっても、1人分の業務として毎日数時間の仕事として確保するほどのボリュームがないという企業がほとんどです。
その他には清掃などの業務も考えられますが、大きな施設・設備を有する企業に限られるのに加え、必要な清掃業務はすでに外部委託している場合も多く、障がい者の業務として発生しないようです。

では実際、どのような企業・職種で障がい者雇用が行われているのでしょうか。
前述の障害者雇用実態調査によると、
身体障害者の雇用については製造業が最も多く、次いで卸売業、小売業、サービス業の順となっています。知的障害、精神障害では、最も多いのが卸売業、小売業、次いで製造業、サービス業と続きます。
どちらかというと、身体に障害がある方の場合、製造業での就業が難しいイメージがありましたが、実際は製造業での就業が多いようです。
図2:障害の種類・産業別雇用実態
「障害者雇用実態調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html)をもとに筆者作成
次に職業別にみると、身体障害の場合、事務的職業が最も多く、生産工程の職業、サービスの職業と続きます。
知的障害の場合は、サービスの職業、運搬・清掃・包装等の職業、販売の職業という順に、精神障害の場合は、事務的職業の次に多いのが専門的、技術的職業、そしてサービスの職業となっています。
図3:障害の種類・職業別雇用実態
「障害者雇用実態調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html)をもとに筆者作成
ひとくちに障がい者雇用といっても、多様な業務、多様な職種での雇用があることがわかります。
生産工程の職業に就く身体障がい者が多いこと、いずれの障がいでも対人コミュニケーションが多そうなサービスの職業が上位であること、精神障がいでは専門的、技術的職業の割合が高いことなど、少しイメージと異なる部分もあるのではないでしょうか。
私自身、障がい者雇用を担当することになって改めて、ひとりひとりの障がいの種類や程度は全く異なることを実感しました。当たり前のことですが、どこか無意識のうちに画一的に見ていた気がします。

では実際、どのような業務を任せたらよいのでしょうか。
業務切り出しのポイント1つめは、業務単位・個人単位で考えるのではなく、タスクに分解してみることです。たとえば採用業務を考えた場合、面接の実施や判断などの重要な局面以外に、Web等への募集情報の掲載作業、応募情報の管理のためのデータ入力や書類ファイリング、応募者や面接官との日程調整連絡、合否通知の作成・送付など、不随する事務作業がたくさんあります。
一連の流れで、採用担当者が行うことが通常ですが、一つ一つの作業は短時間でも、すべてをあわせると、相応の時間がかかっています。
残業時間の多い社員がいたら、どの作業で時間をとられているのか、それを切り出すことができないかを考えてみるのはいかがでしょうか。
もうひとつのポイントは、緊急性がなく後回しになっているものの実は重要な業務がないかを考えてみることです。先ほどの採用業務の例でいうと、募集・選考は、ある程度スケジュールが決まっており、先延ばしにすることができません。
しかし、たとえば採用広報(Webサイトの更新やSNS活用など)は、近年重要度が増しているにも関わらず、手が回っていない企業が多くあります。求職者が求めるのは、人事担当者による説明や、面接場面での対応だけでなく、働く環境や社員の雰囲気など、リアルな内情にシフトしており、ネットを通じて収集されていることがほとんどです。広報は求職潜在層へも含めた自社の認知向上やイメージアップ、入社後のギャップの低減にもつながります。
逆に、採用ページの情報が古かったり、SNSの最終更新が1年以上前だったりする企業アカウントもあり、それではせっかく応募を検討した求職者に対しても、かえってイメージダウンになりかねません。
広報の設計は採用担当を中心に進める必要がありますが、定期的な情報入力、写真や動画の加工などの作業を切り出せないか、考えてみるのもよいかもしれません。

業務の切り出しは、障がい者雇用のポジションをつくるだけでなく、業務改善・生産性向上も期待できます。組織内に存在する業務には、属人的に行われており、その業務に必要なスキルや適性が明文化されていないこともしばしばです。業務フローを再整備して、マニュアル化しておけば、採用・配置・教育・評価などの各場面でも活用でき、多くのメリットを生みそうです。
また、障がい者雇用の採用や定着において不可欠な業務の切り出しですが、同時に他の社員にとっての効果が期待できてこそ、持続可能な環境につながるのかもしれません。あらゆる人が共生し活躍する職場づくりに、私たちのサービスもまた進化させていきたいと思います。
弊社では、障がい者雇用をはじめ、あらゆる人的課題に対応しています。お悩みやお困りごとは、こちらからお気軽にお問合せください。
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クリエアナブキ 障がい者雇用支援グループ マネージャー
北海道出身。学生時代から東京で過ごす。クリエアナブキ入社後、東京・大阪で人材サービスを長く経験。現在は、香川県在住。広島カープファン。 【主な資格】 2級キャリア・コンサルティング技能士 中小企業診断士