AI, BPO, DX

AIツールの導入を提案したものの、経営会議で承認されなかったという経験はないでしょうか。
費用対効果を試算し、導入事例も調査し、工数削減効果も整理した。それでも承認されないケースは少なくありません。
提案する側からすると、「これだけ準備したのに、なぜ承認されないのだろう」と感じることもあるでしょう。
その理由は、提案内容が不十分だからではありません。
提案する側と経営者では、判断しているポイントが異なるためです。提案する側は、ツールの機能や費用対効果を説明します。
一方、経営者が見ているのは、そのツールによって組織が本当に変わるかどうかです。
実際に、あるメーカーの営業責任者から相談を受けたことがあります。
営業会議の議事録作成にかなりの時間がかかっているため、AI議事録ツールを導入したいという内容でした。
提案資料は見事でした。営業メンバーは20名。1人あたり月2時間削減できれば、年間480時間の創出ができるし、しかも費用も安い。競合企業でも導入が進んでいる。提案内容を見る限り、導入が承認される可能性は十分あると感じました。
ところが結果は否決。
後日、判断理由を確認したところ、経営者が懸念していたのはツールの性能ではありませんでした。
重視していたのは、「本当に現場で定着し、継続的に活用されるのか」という点。
この結果から見えてくるのは、、経営者と現場では提案を見る視点が異なるということ。現場はツールの機能や費用対効果を重視します。一方、経営者が見ているのは、そのツールによって組織が本当に変わるかどうかです。
なぜ経営者はそんな視点になるのでしょうか。理由はシンプルです。過去に何度も失敗しているからです。
SFAを導入したのに誰も入力しなかった。
チャットツールを導入したのにメール文化は変わらなかった。
採用管理システムを導入したのに、一部の担当者しか使わなかった。
新制度を始めたのに、半年後には元に戻った。
経営者は知っています。システムを入れることは難しくない。本当に難しいのは、人の行動を変えることだと。だからAIツールの提案を聞くときも、「誰が定着を推進するのか」「3か月後も使われ続けるのか」「組織は本当に変わるのか」を見ています。

以前、ある経営者がこう話していました。
「月5万円や10万円のツール代なんて正直大した話じゃない。でも、導入したのに誰も使わなくなって半年後に解約する。それが一番嫌だ」
と。なぜなら、それは単なる投資失敗ではなく、組織を変えられなかったという事実が残るからだと。そしてその失敗は、次の挑戦を難しくします。現場は「どうせまた定着しない」と思うようになり、経営層は「また同じことになるのではないか」と疑うようになる。
組織は少しずつ変化を信じなくなっていくのです。
では、こうした経営者に対して、どのような提案をすればよいのでしょうか。もちろんツールの説明は重要ですが、それだけでは足りません。
本当に知りたいのは、「どうすれば現場が変わるのか」だからです。
そのときに重要なのが、AIで効率化できる業務と、そうでない業務を切り分けて考えることです。そうして整理していくと、どの業務を自社で担い、どこを外部に任せるかが見えてきます。そのうえで、必要に応じてBPOを組み合わせることで、業務改善を進めやすくなります。経営者に提案する際も、こうした整理を踏まえて示すことが大切です。
例えば、「このAIツールで議事録作成時間を50%削減できます」という提案よりも、「まず営業部の1チームだけで90日間試します。利用率70%を超えたら全社展開します。毎月利用率を報告し、定着しなければ撤退します」という提案の方がはるかに響きます。なぜなら、それはツールの話ではなく、“変化をどう実現するか”の話だからです。

ここで一度、これまでのご自身の提案を振り返ってみてください。
経営者が知りたいことに、本当に答えられているでしょうか。
【提案前に確認したいチェックリスト】
□ 利用する部署・メンバーが明確になっているか
□ 定着を推進する担当者が決まっているか
□ 利用率や定着率などの評価指標が設定されているか
□ 一部門や一部チームで試すステップを設計しているか
□ 定着しなかった場合の改善策や撤退基準があるか
□ 解決したい課題と導入目的が明確になっているか

優秀な提案者ほど成功の話ばかりしません。むしろ失敗の話をします。
どこで効果を測るのか。誰が責任を持つのか。定着しなかったらどうするのか。撤退基準は何か。そこまで考えられている提案を見ると、経営者は安心します。
「この人はツールの導入が目的ではない 。成果を出したいのだ」と。
そして、その成果を実現する手段は、必ずしもツール導入だけとは限りません。業務内容によっては、新しいシステムを導入するよりも、業務プロセスを見直したり、BPOを活用する方が早く成果につながるケースもあります。
大切なのは、「どのツールを導入するか」ではなく、「どうすれば業務改善を実現できるか」という視点です。
実際にクリエアナブキのBPOで、業務分析を通じて「どこをAIで自動化し、どこを人が担うべきか」を整理し、業務フローそのものを見直したことで、経営者が理解しやすい業務改善をお手伝いした事例があります。
ツール導入の先にある成果まで考えること。それが、経営者に伝わる提案の第一歩です。クリエアナブキでは、業務課題の整理から業務改善までご支援しています。
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クリエアナブキ 取締役事業推進部長
愛媛県新居浜市生まれ。 地域のひとに関わるすべての問題をビジネスで解決することをミッションに、自社で様々な事業推進や立ち上げをしながら、地域コミュニティーでも数多くの活動を行っている。